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春闘、真っ只中である。しかしながら、相応の「活気」が感じられたここ数年と比べて、政労使いずれもその熱量は低下している。「官製色」が圧倒的に薄れたためだろうか。企業はベースアップから距離を置き、労組も「現実路線」を採る。その流れのなか、「従来型」の賃金改善よりも、人材確保につながる「働き方」を問う姿勢が見てとれる。
労働組合が掲げる目的は、「組合員の雇用維持」「労働条件の改善」が一般的だ。後者を実現することにより、現在働いている人の「働きがい」「働きやすさ」を確保しつつ、優秀な人材を新たに確保するためのツールとすることで前者の目的を達成する。終身雇用や年功序列型賃金の考え方が崩壊した今、賃金については、多くの企業が望むとされる、賞与による賃上げのみに依存しない枠組みをどれだけアウトプットできるかが交渉に求められている。
その春闘での賃金改善や賞与支給交渉に合わせた「同時要求」の形式でも見られるが、労働条件に関わる事項に限定せず、経営環境や会社の経営方針・ビジョンなどについての意見交換を行う「労使協議(経営協議)」を、程度に差はあれ実施する労使は少なくない。その際には、これからは人材配置のあるべき姿について深く協議してもらいたい。従業員の雇用維持を図ることは前提としながら、その振り分け方についてである。企業が永続的に発展し、働くものは「働きがい」を感じながらキャリアパスを描きながら働けるかについてだ。
「人材不足=RPAやAIに依存できるタスクは人からどんどん代替する」という風潮が全盛だが、安直に時代に流されず、タスク別に業務を整理して、絶対に人が担わなければならないところとは何かを、理由を含め言語化し労使間で考え方を共有してほしい。その時、属人性や過去に囚われることのないようゼロベースを基本とし、中長期の経営計画に紐付いた考え方が求められる。
ツーリズムにおいては、旅行会社の店頭販売員や宿泊施設のコンシェルジュを含めた問い合わせ対応のスタッフについて、タスクのチャットポッドへの代替化やそもそも不要だなどと論じられることがある。旅行相談は、LINEなどのコミュニケーションアプリを活用した相談が現実にビジネスとなっており、ホテルに配備されたポッドは、スピーディーに24時間いつでも顧客の課題を解決可能とし、ヒューマンエラーを防げる点からも有能とされる。
では、人は何もしなくてよいのか。相談や問い合わせをする人の中には、純粋に何も知らずに尋ねる人もいれば、調べて考えた上で尋ねる人もいる。私見では、後者が全体の多数を占めると検討するなか、「決断」して尋ねて来られる人の話を「聞いてあげる」分野にこそヒューマンタッチが求められる場面があると考える。米国のレジ無しショップ「Amazon Go」は、単にキャッシャー要員削減によるコストダウンを目的とせず、頻繁は商品補充を行い、案内スタッフを十分に揃えることで、それまでとは別の顧客サービスを充実させて顧客満足を高める戦略との分析がある。働く人あっての産業である以上、人の温かみを加えるべきところを明確に示し、近年の新たな競合との差別化につなげることが求められると考える。「人を守る」労組だからこそ、人のことはよく知っているわけで、革新的な「人の使い方」を提案したい。
TOPIC:A
アレクサが応対 小田急ホテル「音声ボット全室整備」の効果
2019.03.27(水)日経クロストレンドより引用
2020年の東京五輪に向けて、インバウンド需要が高まりつつある中、観光業界は多様な国々からの顧客にどう対応するかという課題に直面している。解決策の1つとして注目を集めているのがチャットポッドだ。東京都内では、多言語対応の音声ボットが使える機器を全室に導入するホテルも登場した。
TOPIC:B
AIコンシェルジュの利用状況を発表 ホテル日航成田
2018.01.17(水)配信 旬刊旅行新聞より引用
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