三方良しの省力化

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 ここ数日、大阪の宿泊業界に関わるニュースが多い。ホテルチェーンのアパグループが、客室数1,500超のタワーホテルを梅田に開業する計画との報道には、そのスケールの大きさにとりわけ驚かされた。インバウンドで賑わい、2025年の万博開催を控える大阪。宿泊需要がこの先も中長期的に見込めるということか、阪急阪神ホテルズが2020年に1,000室クラスのホテルを大阪駅北側への出店を発表してから、半年ほどでの今般の話である。1,000室の「大阪最大規模」から1,500室の「西日本最大規模」へと人々の関心をあっさり移しかねないインパクト。大阪駅へのアプローチの至便性にはやや劣るも、飲食店が軒を連ねる曽根崎エリアへのアパ進出は、地元の雰囲気や食い倒れカルチャーを体験したいツーリストにはこの上ない立地で、間違いなく注目されるだろう。



 1,500室規模となると、宿泊客への対応は果たしてどうなるのか。今年4月からの改正出入国管理法下では、「外国人労働者受け入れ拡大の対象業種」とされている宿泊業界である。ただでさえ安価な水準に留まるケースが散見される従業員の給与を引き上げることなく、「安い労働力」に依存する経営者が続々と現れてこないかが危惧されている。そんななか、アパは取り巻く現下の環境を予見していたかのように、業界に先んじた人手不足に対応した取り組みを進めている。チェックアウト時にフロントへ立ち寄らずに利用代金の支払いができる自動精算機を設置し、精算が無ければ客室のキーをBOXへ投入すればスピーディーに発てるシステムを導入しているのだ。朝の時間は誰もが有効に活用したい。フロント前のチェックアウトの行列はまっぴら御免だし、行列の先での対応に「心のこもったおもてなし」を望む人がいるとは到底思えない。人手をかけずローコストを実現しながらも、利用者のニーズにマッチした施策が展開されているわけだ。



 ビジネスホテルに限らず、このほど、リーガロイヤルホテルが客室内でQRコードを使ったチェックアウトの精算を可能とするシステムの導入を発表した。こうした、省人化システムを業界は大いに取り入れるべきだ。残念ながら、賃上げの期待が一層乏しくなると想定される今春以降、従業員確保がさらに困難になるのは目に見えている。必要のない「おもてなし」の押し売りは誰も求めておらず、何でも「人」で対応する必要はない。利用客へのコミュニケーションを通じた体験価値提供はTPOを選ぶことを鑑み、前例やこれまでの経験に囚われることのない、サービス提供に関わるさらなるイノベーションが生まれることを期待したい。




TOPIC:A

IoTが変えるホテル
2019.03.15(金)日経MJより引用

and factoryが運営するホテル「AND HOSTEL」では現在、複数の施設で約50室の「Iotルーム」が稼働している。チェックイン時に渡されるスマートフォンが、鍵や客室内のコントローラーの役割を担う。部屋のシーンを朝や就寝時などボタンひとつで選択でき、照明やカーテン、アロマなどが連動して動き出す。料金は通常の部屋よりも高いにも関わらず、稼働率は8割と好調で評判も良い。7割は外国人の利用だ。



TOPIC:B

ホテルに省人化システム
2019.01.24(木)日経産業新聞より引用

共同印刷は宿泊施設向けに顔認証とQRコードを使ってチェックインや客室の解錠をするシステムを開発した。ホテルの従業員が接客することなく、宿泊者が入室までできる。人手不足が続く中、省人化につながるシステムとして拡販し、3年内に5億円の売上高をめざす。

サービス連合情報総研

一般社団法人サービス連合情報総研のホームページです。 この組織は、旅行・宿泊・国際航空貨物で働く仲間でつくったシンクタンクです。 2018年3月本格稼働。業界で働いているからこそ、の視座で情報発信します。