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2018年が残すところあと1ヶ月を切った。今年は、気象に関わる記録的な事象が発生したり、全国各地において地震や豪雨により大きな被害を受けたりするなど、自然災害が相次いだ年だった。「新語・流行語大賞2018」には、「災害級の暑さ」や「計画運休」がノミネートされ、前者はトップテンにも選出された。
異常気象は日本国内に限らない。北極圏で30度、アメリカでは50度を超えるなど記録的な猛暑が世界各地で広がった。7月、世界気象機関(WMO)は、同月に西日本を襲った豪雨災害も含めた一連の異常気象を、「温暖化ガスの増加による長期的な地球温暖化の傾向と関係している」との分析を記者会見で示した。
西日本豪雨や台風21号、北海道胆振東部地震の影響はとりわけ長期に及ぶこととなり、観光産業は大きな経済的損失を受けた。自然災害や紛争・事件、感染症の流行や、為替相場の動向など、様々な観点での「外部環境が危うい状況」においては、それとパラレルに減収減益へと陥ることの多いツーリズム界隈だが、何ら手立てを打つことなく、その成り行きに身を任せることしかできないのだろうか。持続可能な産業とするからには、可能な限り未然に脅威から自身の身を守ることのできる策を講じる必要があると考える。
一企業や産業の従事者が結集したところで太刀打ちできないような課題はさておき、すぐにでも取り組めることはある。環境に対する社会的責任を産業内の企業がコミットすることだ。地球温暖化が異常気象をもたらすのであれば、温暖化を食い止めるあるいは進行を停滞させることができれば、産業に及ぼす悪影響を低減することができるかもしれない。折しも今、企業におけるESGへの取り組みは社会的に要請されている。リーマン・ショックの教訓から、市場では、投資の傾向が中長期的なリターン確保へとシフトしている。投資を呼び込む以上、サスティナブルな社会を構築するうえでの環境重視が求められていることは当然と受け止められている。もちろん、非上場企業だからとて他人面していてよいという話ではない。
観光業界や観光の現場で働くものの環境への意識はどうだろう。世界各地の美しい風景を素材としたうえで、自らの商品に加工し消費者へ販売していながら、意識の度合いはどう贔屓目に受け取っても低い。一時的な美化活動の企画で満足し、カーボンオフセット商品を申し訳なさげに市場へ投入している程度に過ぎず、継続性をもって経年的な取り組みが前向きに進められてはいない。ESG(環境、社会、ガバナンス)対策の一歩目でつまずいているのだから、「S」や「G」の必要性に気づけるわけもない状況だ。時代の要請に応じたビジネスを展開することが、社会的な評価に繋がる可能性を想像することすら欠如している。
地球温暖化に繋がる、例えば二酸化炭素の排出量削減に繋がる取り組みを徹底することで、結果として自然災害を減らすことができれば、個社の損失を減らせられる。本業に関わる社会課題解決は、企業ブランド向上につながる側面もある。そうした取り組みが自社のあるいは産業が発展するカギと位置付けられなければならないはずだ。災害後の「ふっこう割」と称する補助金のおこぼれを座して待つのではなく、回り道であったとしても覚悟を持った積極的な取り組みを進めなければならない。
TOPIC:A
SDGsと収益、相関関係 小林喜光氏
2018.09.06(木)朝日新聞より抜粋
経営には「心・技・体」の3軸が必要だと言い続けてきました。「体」は会社の体力を示す財務指標で経営の健全性です。「技」はイノベーション。これで企業はフロンティアを切り開いていきます。「心」は社会性のことで、経営者は人や社会、地球環境のことを考えなければいけません。これはSDGsそのものです。(中略)
持続可能性を前面に出した経営をしてデータを取ってきましたが、SDGsにきちんと取り組むと企業収益も増える「正の相関関係」があるという結果も出ています。
TOPIC:B
環境負荷抑制促す保険で成長。SOMPO HD、少子高齢化にも対応
2018.11.27(火)日本経済新聞より引用
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